天岩戸

世の中の初めにイザナギノミコト(男神),イザナミノミコト(女神)がいました。 イザナミは日本国を産んだ後、火の神を産んだ時の火傷で命を落とし、黄泉の国を治めることになりました。 残されたイザナギは、自分の持ち物や体から次々に沢山の神様を生みますが、その中でも特に素晴らしい三神が、

アマテラスオオミカミ(太陽の女神)
ツクヨミノミコト(月の男神)
スサノオノミコト(嵐の男神)

でした。天岩戸の物語は、このアマテラスとスサノオが主人公です。 スサノオは、イザナギから海原を治めるように命じられたのですが、乱暴でかんしゃく持ちで、 仕事をすることなく周囲を困らせるばかりでした。イザナギがその理由を聞くとスサノオは「母(イザナミ)のいる黄泉の国へ行く」 と言って聞かないので、ついにスサノオを追い払ってしまいました。スサノオは、その足で姉のアマテラスに暇乞いに向かいます。

アマテラスは、天上で神々の住む高天原(たかまがはら)を治める最高神です。 アマテラスは日頃評判の悪いスサノオを警戒するので、スサノオはアマテラスの勾玉(まがたま)を噛み砕いて男神を産んでみせて誓いを立てます。 しかし、それは元がアマテラスの勾玉だったため、誓いとみなせるか否かで押し問答となってしまいますが、 スサノオは一方的に自分が勝ったと勝ち誇り、根っからの気性の荒さゆえに、田んぼの畦を切る,灌漑の溝を埋める, 御殿に糞をする、などの狼藉の限りを尽くしました。それでもアマテラスは一度はスサノオに理解を示します。 するとスサノオはますます調子に乗って、織女たちの御殿の屋根に穴を開け、そこから皮をはいだ血だらけの馬を投げ落とし、 それが元でとうとう織女の一人が死んでしまいました。

さすがのアマテラスもこれには嘆き悲しみ、ついに天岩戸の奥に引きこもり、入り口を大岩でふさいでしまいました。 大変なことにアマテラスが隠れてしまったため、世の中は闇夜となりました。 八百万(やおよろず)の神々は大いに困って、天の安河原で相談します。 そこで卓越した知恵者オモイカネが指揮を執り、アマテラスを表に出すための作戦を開始します。

まず、長鳴鳥(鶏)を集めていっせいに鳴かしました。次に、神々によって 矛,鏡,玉飾り などを作り、祝詞を奏上しました。さらに、女神アマノウズメが髪を振り乱しおどけて踊りだしました。 その踊りの面白さに、八百万の神々も高天原が揺れ動くほどに、声を上げて笑いました。

外の騒ぎを天岩戸の奥で聞いていたアマテラスは、大岩を少し開いて問いました。 「私が隠れて世の中が闇となり困っているかと思ったらどうしたこと? なぜアマノウズメは踊り、神々は愉快に笑っているのですか?」

アマノウズメは答えます。「アマテラス様よりも高貴な神様がお出で下さいましたので、喜んで踊っているのです。」 そこに、別の神が鏡をさっとアマテラスに差し出しました。 アマテラスはそこに映った輝かしい自身の姿を、新しい高貴な神と勘違いしてしまいます。 そして、もっとよく見ようと身を乗り出したとき、岩かげに身を潜めていた怪力のタジカラヲがアマテラスの腕を掴んで一気に引き出しました。 つづいて、やはり隠れて待機していたフトタマが天岩戸に注連縄(しめなわ)を張って、二度とアマテラスが入れないようにし、 こうして知恵者オモイカネの作戦は大成功に終わりました。 これにて、天上の高天原も地上も再び以前と同様に明るくなりました。

この事件の原因を作ったスサノオは、八百万の神により罰として沢山の献上品を召したてられ、髭を切られ、 手足の爪を抜かれ、さらにお祓いされて、高天原を追放されてしまいました。

困り果てた神々は「なんとか天岩戸から出てきてはもらえないだろうか……」と相談し、まず太陽を呼ぶ鳥とされた長鳴鳥(ながなきとり)の声で天照を外に出そうとします。しかしこの作戦は失敗し、次に天鈿女命(あめのうずめのみこと)が招霊(おがたま)の木枝を振って舞い、他の神々はひたすら騒ぎました。これは「楽しそうにしていれば、様子が気になって天照も出てくるのでは?」という考えからくるもので、予想通り天照は外の様子が気になりだします。

「えっ、わたしが引きこもっているのになんで楽しそうなの? 困ってるんじゃないの?」と思った彼女は、天岩戸を少しだけ開いて外を見ました。そんな彼女に神々は「いや、実はあなたより美人で立派な神様が来てくれたんですよ」と言い、鏡で天照の顔を映し出して見せました。鏡を使っているのですから天照は自分の顔を見ているわけですが、自分の顔だとは気づきません。興味をそそられ「もう少し見せてよ」と体を乗り出した隙に、神々は岩を開け放って彼女を外に出しました。世界には光が戻り、明るく平和な時代が戻ってきたということです。めでたしめでたし……。

日本歴史上最も有名な引きこもり伝説を現代に

アマテラスオオミカミは、神々の愉快な笑い声に、天岩戸の大岩を開き、八咫の鏡に映った自らの姿を高貴な神と勘違いして、身を乗り出して、隠れていた天岩戸から出る事になります。

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